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【偽書】熱闘スコアノート(夏娘跳ねる 2015) 72

「ボール」

初球は外角中程へ外れるボールと分かる球。

これなら無理にスクイズもしにくいしパスボールも出しにくい。

二球目は内角に速い球を投じる。

一瞬考えたが球審はストライクを宣告する。

「打者は動かず…か」

これは相手チームのベンチ。

「見たのか手が出せなかったのか予想が外れたのか」

これは我がチームのスタンド応援席。

スタンドからは自軍のベンチを覗けないが、打者はベンチを見ようとはしないから、監督はノーサイン?

コーチャーズボックスの選手も特段の動きは無い。

それは相手バッテリーの判断材料を遮断していた。

バッテリーは勝負手に出てきた。

カウントを取りに内角へのストライク球。

それが少しだけ高めに来る。

打者の動きに加速して来る一塁手三塁手

だが、三塁走者はベースから大きく離れない。

スクイズは無いと踏んだ投手はマウンドからダッシュする脚を緩めて前進。

二塁手は一塁ベースのカバーへ、遊撃手は三塁へのカバーへと動き出す。

「うりゃあ!」

打者の振ったバットにボールが当たる。

それは前進した投手と、それぞれカバーに入った二遊間の間に大きく膨らんだスペースに落ちる。

投手、二塁手、遊撃手、そして前進気味の中堅手の四人が一つのボールを追う様に集まる。

やや浅めに動いていた遊撃手が捌いたボールをホームへ投げるが、前進していた三塁手が途中でカットし一塁へ投げる。

三塁走者の生還は阻止出来ないなら打者アウトを狙う算段だ。

二塁手が一塁カバーへ入れない為、右翼手が一塁カバーに入り、打者走者と交錯する様に一塁で重なる。

滑り込んでホームインする三塁走者。

捕球した右翼手ともつれる様に一塁ベースを過ぎて転げる打者走者。

際どい判定はアウト。

一塁塁審が手を振り下ろす。

走塁妨害をアピールして塁審に駆け寄る一塁コーチャーズボックスの選手。

ヒートアップする観客の声の中、主審と協議に入る塁審。

そんな中、二人の人物は動きを見せなかった。

ひとりは相手監督。

もうひとりは、こちらの監督、だ。

「引き下がれ。審判に異論を唱えるな」

キャプテンである高野幸一は一塁へ向けて声を荒げる。

打者走者になだめられ、塁審に帽子をとり一礼して引き下がる一塁コーチャーズボックスの選手。

冷静さを取り戻した観客席から改めて先制点に対する大歓声。

偽書】熱闘スコアノート(夏娘跳ねる 2015) 71

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